2022 年 37 巻 1 号 p. 29-39
早期の膵癌や小膵癌の拾い上げは膵癌の予後向上に必須である.治癒可能な病変の確実な拾い上げには,画像診断を基盤とする診断体系に,膵発癌に重要なゲノム・分子異常に関わる情報を統合する必要がある.KRAS,TP53,SMAD4,CDKN2Aをはじめとした遺伝子変異の検出に加え,細胞外小胞に含まれるRNAやタンパク質の発現を定量する技術に期待が寄せられている.低侵襲かつ高精度な診断の確定を実現するために,次世代シーケンサーを用いた解析のみならず,デジタルPCRを用いた高感度・低コストな検出系を確立することにより,がんゲノム医療を膵癌の早期診断においても拡大・適応できると期待される.本稿では,膵発癌に関与する分子異常を解説し,膵癌患者より採取可能な様々な生体試料を用いた次世代の遺伝子診療に対する取り組みを紹介する.