症例は65歳の男性で,膵頭部癌に対し膵頭十二指腸切除術(pancreatoduodenectomy:PD)の方針となった.術前3D-CTで上腸管膜動脈から左右肝動脈(hepatic artery:HA)が別分岐しており,膵上縁で左HAと胃十二指腸動脈(gastroduodenal artery:GDA)に分岐していた.術中,左HAを辿ってGDAの分岐部を明らかにしてクランプテストを行い,左HAを損傷することなく根部でGDAを処理した.肝胆膵領域におけるHAの破格は約20%に見られ,HA損傷により術後肝障害,肝膿瘍,縫合不全を来すことがある.HAの破格としてはMichelsやHiatt分類等が知られているが,本症例のような破格はいずれの分類にも相当せず,現在までに報告例はなく,非常に稀である.PD時には,3D-CTによる画像評価とクランプテストがHA損傷予防に肝要である.