抄録
鉄は植物生育にとって必須な元素となるが,pHや酸化還元電位などの変化により不溶化する.しかしながら,森林や湿地帯で生産されたフルボ酸や低分子量有機酸などの天然有機物は地中鉱物を溶解するだけでなく,その鉄と錯形成することにより安定な水溶性を示すといわれている。その流域圈と海域での物質輸送を担っているのが河川であり,近年,オホーツク海域の水産資源の推移とアムール川流域の土地利用変化を広域調査している.一方,宮城県沿岸域において漁民による植林活動が行われ,その林床で生産されたフルボ酸による海域水産資源の向上を期待している.しかし,フルボ酸による陸域から海域への鉄輸送メカニズムについての定性的および定量的な知見が十分に得られていないことから,本研究では,蛍光分光スペクトル分析により千葉県小櫃川流域を対象に採水・採土し,分析を行い,正味物質生産量と植物プランクトン生産量との関係を明らかにした.