日本海水学会誌
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2012年結氷期,オホーツク海沿岸能取湖におけるクロロフィルaと水柱環境
西野 康人中川 至純北村 充彰
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2015 年 69 巻 6 号 p. 373-381

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抄録

北海道のオホーツク沿海域にある能取湖は,冬期に全面凍結する海水湖である.オホーツク海との海水交換がある一方で流入河川はごく少ないために,湖内水はほとんど湖外のオホーツク海水に等しいことが明らかになっている.しかし,結氷期の調査研究例はほとんどなく,冬期間の湖内環境は不明である.本研究では,2012年2月3日から4月5日までの結氷期間に,水柱中と海氷中のクロロフィルaの経時変化とその間の環境の変化を調査した.その結果,期間を通じて,水深18 mまでの積算クロロフィルa量は22.4-295.6 mg/m2に達することが分かった.この間,厚さ24-45 cmの海氷中の積算クロロフィルa量は0.2-8.6 mg/m2であった.一見,アイスアルジーの寄与度は小さいようにみえる.しかし,平均濃度では海氷中の値は顕著に高く,その分布は海氷下部に集中しているため,海氷直下の水中の一次消費者にとって利用しやすいものと考えられた.さらに,期間の途中で大型サイズのアイスアルジーが海底に直接沈下している可能性が示唆された.以上まとめると,海氷は,アイスアルジーに生産の場および海氷直下の動物に餌場を提供し,ベントスへ食物を急送する役割を果たしているといえる.

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© 2015 日本海水学会
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