抄録
ヘキサメタリン酸ソーダ(NaPO3)6(Na2H2P2O7を700℃, 30min加熱熔融急冷して調製)が媒晶作用を有することを見出し, その作用と効果をNH4Clの冷却晶出の場合について研究した,
(1)(NaPO3)6の媒晶効果は従来知られているMn2+(MnCl2), Cd2+(CdSO4)の金属イオン媒晶剤に比し, はるかに大である.
(2)(NaPO3)6に類似のポリリン酸ナトリウムNan+2PnO3n+1 (n=4~10)の媒晶効果はnの大なる程大である.
(3)(NaPO3)6の媒晶作用を陰イオン原子団側にありとし, これに金属イオンMn++(MnCl2),Mg++(MgCl2)を併用すると著しく効果的となる.
(4) 冷却晶出において冷却速度小となると, 媒晶効果は大となる.
(5)(NaPO3)6は100℃ 近くの高温のNH4Cl溶液中にて分解し, 媒晶効果は小となるが, ある程度冷却 (80℃) して加えると効果を期待できる。
以上によつて(NaPO3)6の媒晶効果は相当大なるものであることが解つた. しかし, その効果は晶出条件また相手の晶質の種類によつて異なるものである. これらの点について順次報告する