日本塩学会誌
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水酸化第二鉄へのホウ素の吸着について
村上 敏治石原 良雄
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1963 年 16 巻 6 号 p. 264-274

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抄録
(1) ホウ酸希薄水溶液より, 水酸化第二鉄へのホウ素吸着率はpH7.0よりアルカリ側で上昇し, pH8.0~8.5が最適範囲であり, pH9.0より急激に降下する. このホウ素吸着はフロインドリツヒの吸着等温式に合致する. 温度は低温になるほど吸着能を強くし, 吸着率は上昇する.
(2) 人工苦汁あるいは苦汁においては, 水酸化第二鉄を苦汁中で生成する場合, または新しく調製した水酸化第二鉄を苦汁に添加してホウ素を吸着させる場合, 最適pH範囲は6.0~7.0にあり, ホウ酸溶液の場合より酸性側に移行する. 苦汁におけるホウ素吸着も同様に吸着等温式に適合し, 温度20℃以下10℃で高い吸着率がえられる.
(3) 苦汁より水酸化第二鉄によるホウ素吸着には, 苦汁中の諸元素の吸着共沈を伴い, とくにMg, SO4が著しい. この吸着共沈についてはホウ素の溶離方法と関連するが, とくにSO4の共沈をさけるためには, 脱硫苦汁または濃厚苦汁をホウ素採取の対象とすれば適当であり, また, 脱硫苦汁より石灰乳等との反応によつて水酸化マグネシウムを分離採取した後の処理残液を対象とすることも可能と思われる.
(4) 本実験で生成した各条件の水酸化第二鉄のX線回折図を測定したが, その回折図形にはとくに相違がみとめられず, 水酸化第二鉄は本来の無定形態をとり, その結晶子の大きさはおよそ12~15Åであった.
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