抄録
合理化された電槽構造および膜群構造を有する, 有効膜面積115dm2・306対の水槽型電気透析装置を設計し, 2種の膜 (I-S'2膜およびII膜) を装着して, 10,000時間にわたる長期試験を実施し, 次の結果を得た.
1) 装置・膜群構造には特に問題点は見出されず, 膜群の取扱いも容易であつた. したがつて本装置の構造を基礎としてさらに大規模装置の設計が可能であるとの見通しを得た.
2) 膜群端板の有効通電面積を74%から91%に増加した結果, 装置全体として電気抵抗が2~3%減少したようにみうけられたが明瞭ではなかつた.
膜セルを点検した結果, 膜群端板に隣接している膜セルには, 膜群端板の格子が電流の一部を遮閉したためにできた格子模様が認められたが, 次の膜セルでは明瞭ではなかつた.
3) 初期には, I-S'2膜のセル内にかん水が滞溜するものがあり, これに起因したトラブルが発生したが, この原因はいずれも膜セルの仕上げが不良であつたためである.
4) 運転中, I-S'2膜には大きなしわが, II 膜には小さなしわが生じたが, いずれも通液障害をまねくため, きわめて有害であることが認められた.
5) I-S'2膜は, 2価陽イオン難透過性が急速に劣化したが, 同種膜でもほとんど劣化しない場合もあつた.
6) 砂ろ過海水を給液した場合でも, 海水懸濁物の膜面付着量が, 気泡撹拌により減少するのが認められた.
また気泡攪拌後は, 一時的に電槽の抵抗が約5%小さくなることが認められた.
7) 試験期間中, 電槽の流動抵抗の増加はほとんど認められなかつた.
8) II膜の陰イオン膜は, 使用中にかなり硬化しているのが認められたが, 酸液中に浸漬すれば柔軟性をとりもどすことがわかつた.
本試験実施に当り, 終始御助言を得た, 現橋本工場長半沢信久氏, 現福岡局部長鈴木清氏, ならびに測定・分析に御協力を得た山本秀夫研究員, 湯山二男氏, 柚木法子氏, 電力および給液設備の保守を担当された磯崎満氏, 装置の操作・組立・解体に助力いただいた配島勇氏, 鈴木竜治氏, 譲原孝氏, 最初の膜群組立てに御協力いただいた, 大阪支社尾崎勇氏, 高松地方局坪井昇氏, 岡山地方局福井弘志氏, 郡山地方局矢吹昭氏, 徳島地方局門田智明氏, 本社城宝圭三氏に謝意を表する.