日本海水学会誌
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陽イオン交換膜の2価イオン難透過処理にともなう膜の電気抵抗の変化および水分解の発生
イオン交換膜透析における2価イオン難透過処理の研究 (第5報)
田中 良修
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1977 年 31 巻 3 号 p. 123-127

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抄録

(1) 塩化ナトリウムと塩化カルシウムの混合水溶液中にhexa-dimethrine bromideを微量添加し, これを小型透析装置に供給し, 通電しながら陽イオン交換膜の2価イオン難透過処理を行なったところ, カルシウムイオンのナトリウムイオンに対する選択透過係数TCaNaは大幅に低下した.
(2) 処理にともなって, 極間電圧が増加した.電圧上昇の第1の理由は, 陽イオン交換膜面に形成された処理剤層と陽イオン交換膜との境界領域で電解質イオン濃度が低下するためであり, 第2の理由は処理剤層の電気抵抗が増加するためである.
(3) 処理によって脱塩液はアルカリ性に, 濃縮液は酸性に変化した. pH変化の理由は, 処理剤層と陽イオン交換膜の境界領域で水分解が生じたためである.
(4) 処理した陽イオン交換膜の電気抵抗を塩化ナトリウムと塩化カルシウムの混合水溶液中で測定したところ, 大きな値が得られた. これは, 処理剤層が2価イオン (カルシウムイオン) 難透過性を示すので, 処理剤層の電気抵抗が増加したためである. 同一膜の塩化ナトリウム水溶液中で測定した電気抵抗は大きな値とならず, 処理剤層はナトリウムイオンの透過に対して大きな抵抗を示さないと思われた.
(5) 陽イオン交換膜に対する処理剤は, 陰イオン交換膜面に蓄積しない.

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