抄録
アルカリ金属イオンに対して非常に高いイオン交換反応選択性を示すナトリウム形テニオライト(NaT)を粒状化し, かん水中のカリウムイオンやセシウムイオンをカラム法により除去するための特性について調べた. NaTは混合かくはん造粒機を用いることで粒状化することができ, その中でも結合剤としてコロイダルシリカを10wt%加えて粒状化したものが水中での形状安定性などからカラム充填に適していることがわかった. コロイダルシリカを用いた粒状化NaTは反応速度がいくらか低下するものの, イオン交換特性については粉末とほとんど違いは見られなかった. バッチ反応でのイオン交換反応速度の解析により, 初期では反応は境膜拡散律速であり, 交換率が20%程度以上で粒子内拡散律速に変化することがわかった. この律速段階の移行は, 粉末のNaTで見られるような交換反応の進行にともない層間距離の変化することなどにより粒子内拡散係数が変化するためであると考えられる. 粒状化NaTを充填したカラムはバッチ法と同様にカリウムイオンに対して優れたイオン交換特性を示した, NaTの粒径は破過挙動に大きな影響を与えることがわかった. 破過曲線の解析から, 破過挙動は粒子内でのカリウムイオンやナトリウムイオンの物質移動抵抗の寄与が大きいことが明らかになった. 模擬海水を用いた試験では, ナトリウムイオンが過剰に共存するにもかかわらず, カリウムイオンやセシウムイオンを非常に選択的に除去することができた. よって, 粒状化NaTを用いたイオン交換カラムは, かん水中のこれらのイオンの除去に右用であると考えられる.