抄録
円石藻Erniliania huxleyi の培養において, 自然海水および市販の数種の人工海水培地のみでは非常に低い生育速度しか得られず, 微量要素の添加が生育速度の増大に不可欠であった. 添加培地としては, ESM培地 (岡市ら1982) およびK(培地 (Keller ら1987) の有効性が高く, f/2培地 (Guillard ら1975) およびPES培地 (Provasoli ら 1957) の有効性は低かった. ESM培地から土壌抽出液を除いた場合, 自然海水ではその生育に対する影響は見られなかったが, 人工海水では, Jamarin S, SeaLife, MarineA 順に生育速度が低下した. Marine Art SF の場合, ESM培地から土壌抽出液を除去したことによる生育の抑制はセレンの添加によって回復した. 土壌抽出液およびセレン無添加培地で1回継代することにより, 生育は完全に阻害 された. 以上の結果は, この円石藻種の生育にセレンが不可欠であり, ESM添加培地中の土壌抽出液をセレンで置換できることを示している. 3種のセレン化合物の至適濃度は各々異なり, SeO2及びNa2SeO3の場合は1-10nM, Na2SeO4 の場合は1μMであった. セレン欠乏状態が進行するに伴い生育が次第に抑制されたが, 細胞当たりの光合成14CO2固定速度はセレン欠乏の影響を受けず, 光合成以外の要因が生育阻害の原因であることが示された.