中央北太平洋および東部北太平洋の亜熱帯海域から亜寒帯海域の有光層において, バクテリア炭素生物量の見積りに関するアデノシン三リン酸の生物地球化学的意義を評価するため, ピコサイズ区分 (0.2-0.7μm) のクロロフィルa (Chl a), アデノシン三リン酸 (ATP) およびバクテリアの濃度が測定された. そのChla濃度が経度, 緯度あるいは深度的にほぼ一定の値であったが, そのATP濃度は著しく変動した. 統計分析は, ATP濃度とChl a濃度およびバクテリア数との間で有意な相関を示さなかったのに対して,ATP濃度は水温と有意な相関性を示した. これらの結果は, ATP濃度の海域的変動が生きている従属栄養バクテリアの生物量ばかりではなく, 水温の変動に伴うそれ自身の生理的状態 (活性あるいは非活性状態) によって影響されていることを暗示していた.