抄録
近年の製塩プラントにおいては, 蒸発缶材料として耐食性の高いチタンあるいはチタン合金が用いられているが, 周辺の旧来材料と不完全な絶縁状態で使用されるとガルバニック腐食を生じる場合がある. 本研究では, 製塩プラント環境におけるチタンおよび卑な電位を示す金属の例としてモネルをとりあげ, これらの電気化学的挙動を調べた. モネルの自然電位は比較的安定しておりでアノード分極抵抗はあまり大きくなかった. 一方, チタンの自然電位は浸漬時間とともにゆっくりと貴化していった. 浸漬5日後にはチタンとモネルの電位差は0.4Vに達した・チタンとでカソード電流が現れる電位域は浸漬時間とともに広がるが, みかけのカソード分極抵抗は浸漬時間とともに増加する傾向を示した. チタンを定電位でカソード分極し, 減圧沸騰状態から大気下に開放すると, カソード電流密度は大きく増加した. 同様に, チタンとモネル間の短絡電流は雰囲気に応答し, 減圧下では小さい値を示すが, 大気下に開放すると増加した. ガルバニック電流はカソード分極抵抗支配であり, アノードに対するカソードの面積比が増加するほど大きくなった. ガルバニック腐食の等価回路に基づいて, 推奨される絶縁抵抗の値を計算した.