日本海水学会誌
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サンゴ骨格中の硫酸塩含量について
田中 健太郎大出 茂
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2007 年 61 巻 4 号 p. 241-244

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抄録

サンゴ骨格 (あられ石) に存在する硫酸イオンは炭酸イオンとのイオン交換反応により共沈している可能性がある. その平衡定数 (Kso4) は次のように書ける: Kso4=[CaSO4](s)[CO32-](aq)/[CaCO3](s)[SO42-](aq). ここで, 平衡定数と海水中の炭酸イオン濃度は温度に対する変数であるが, 平衡定数の変化は小さいと仮定すると, 上式はサンゴ骨格の硫酸塩含量が海水中の炭酸イオン濃度に反比例することを示す.
サンゴ骨格の硫酸塩含量と海水中の炭酸イオン濃度および海水の温度の関係から, 硫酸イオンの共沈の過程を明らかにするため, イオンクロマト法を使って, ポナペ島 (ミクロネシア), カンカオ島 (タイ), セブ島 (フィリピン), 水釜, ルカン礁 (沖縄県), 堺港 (和歌山県) から採取したサンゴ試料中の硫酸塩含量を定量した. 硫酸塩含量はカンカオ島の試料 (0.404±0.050wt%) を除き, 他の試料でほぼ同じ範囲の値 (0.566±0.064wt%) であり, サンゴの硫酸塩含量と海水中の炭酸イオン濃度および海水の温度の間に明確な相関は認められなかった. したがって, 硫酸イオンのサンゴ骨格への共沈は, 炭酸イオン濃度および海水温だけに支配されておらず, 平衡定数の温度依存や他のトレース元素の共沈などからも影響を受けている可能性が考えられる.

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