総合人間学
Online ISSN : 2188-1243
日本における予防接種施策の歴史的変遷について
2009年以降の予防接種施策転換の国内外要因の分析を中心として
野口 友康
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 15 巻 p. 23-37

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抄録
本稿は、戦後から現在に至る日本の予防接種施策の歴史を4期に分けて整理し、とくに2009年以降の第4期に焦点をあてている。第1期は感染症回避を目的とした強制的集団接種、第2期は副反応被害が市民運動によって表面化した時期、第3期は訴訟を背景に個別接種へと移行し、副反応回避を重視する施策がとられた。第4期では、予防接種率の低下、新興感染症の流行、ワクチン産業の育成、WHOによる国際標準化、外資系製薬企業からの市場開放要求という国内外の要因を背景に、施策は再び感染症回避へと転換された。その主柱となったのが「ワクチン・ギャップ」言説である。一方、HPVワクチンを巡る副反応問題も発生し、接種の信頼性が問われる事態にもなった。今後は副反応への迅速な救済制度の整備が求められる。
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