抄録
食品や環境中の有害成分の正確な分析には標準物質が不可欠であるが、特に有機化合物に関しては、多様かつ急増するニーズに標準物質の供給が追いつかない状況にある。そこで、分析技術を高度化することによって、1つの基準となる物質から多様な有機化合物の定量を可能とする方法を開発した。具体的には、水素原子を対象とする核磁気共鳴法に着目し、異なる化学シフトの水素原子の信号量を精密に比較できるように改良することで、水素原子の基準から多様な有機標準物質に対して実用的な不確かさでの校正を可能とした。この成果により、国家標準物質の種類を最小限にできる効率的な計量トレーサビリティの実現の見通しを得た。