抄録
本研究は、induction heating(IH)技術の家庭への普及に関する実証分析により、企業と独立した多様なリード・ユーザーが先端技術を家庭へ普及・導入に貢献するモデルを提案する。大企業がIHを開発しても、家庭が導入するときは、調理道具またレシピ等、付随する調理システムが必要になる。活躍するのは異なった2タイプのリード・ユーザーである。技術に通じ技術の機能性を追求する論理的リード・ユーザーは機能性の観点から調理システムを開発する。一方、技術内容には関心が薄い感性的リード・ユーザーは製品価値に対する社会トレンドの影響に対して卓越した直観力を持っており、調理システムを魅力的にすることによって製品の普及に貢献する。今後、例えばロボットなどのように普及に成功していない先端技術を家庭へ導入するためには、既存技術にはない新しい価値を提示する必要があり、そのためには、産業また大学・公的研究機関が組織から独立した多様なリード・ユーザーと柔軟に連携し、製品を魅力的にすることによって普及を推進する必要がある。