抄録
糖鎖は、遺伝子、タンパク質に次ぐ第3の生命鎖と言われるが、複雑な構造等が障害となり機能の解明は大幅に遅れている。近年、グライコミクスと呼ばれる糖鎖の総合解析が、プロテオミクスの隆盛に後押しされるかたちで進行し出した。その中で、糖鎖プロファイリングと呼ばれる簡易解析法が注目を浴びている。レクチンマイクロアレイは、特異性の異なる数十種の糖結合タンパク質(レクチン)をスライドガラス上にプリントし、蛍光標識された糖タンパク質や細胞抽出液を反応させるという新たな解析手法である。従来法と異なり、糖鎖の遊離と相互分離を必要としない点が利点であり、これにより、細胞の起源や状態を反映した糖鎖プロファイルが迅速、簡便に得られるようになった。レクチンマイクロアレイは、今や、腫瘍マーカー探索、幹細胞品質管理、バイオ医薬品開発等、さまざまなバイオ分野で利用される先鋭技術である。しかし、その実現には先行技術であるフロンタル・アフィニティ・クロマトグラフィーの高性能化とそれを用いた原理検証が必要であった。開発からの10年を振り返る。