抄録
長さの国家標準として用いられるヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザの発振波長は、レーザ共振器の機械的長さで決まる。従来、機械的安定度の高い共振器を実現するためには特殊な材料や素子を使ったり、周囲環境を厳重に管理したりすることは当然と考えられてきた。しかし、レーザの動作や共振器に要求される性能を詳しく調べた結果、レーザ共振器の機構に要求される機械的特性の多くは、市販の汎用部品で十分実現可能であることが明らかとなった。汎用部品を多用して大幅な価格低下を実現しつつ、発振波長の安定度や周囲環境の変動に対する耐性を大幅に向上させることが可能となり、国家標準器として十分な精度で、かつ保守や移送が容易なものを実現した。この設計にもとづくヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザは、日本の長さの国家標準として長年用いられただけでなく、民間の校正事業者が持つ標準器として、また発展途上国の国家標準器としても用いられている。