抄録
鉄鋼業において、製造工期の短縮と能率向上を両立する生産の一貫最適化は、どのように可能であろうか。先行例としてのリーン生産方式では、生産の時間スケールをメインラインのそれに同期化したのに対して、鉄鋼業では自動車と同水準の製造の同期性と時間スケールの圧縮は本質的に難しい。この事例は、生産管理を時間に関するマルチスケール階層構造としてモデル化することにより、鉄鋼産業において工場単位の最適一貫生産がどのように探究されたか、そのプロセスを明らかにした。この論文は、幅広いキャリアを積んだ現場の技術者の生きた知識を構成学的にモデル化し、産業界からの製造知識の体系化を目指した試みである。