システム監査
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【研究論文】 情報システム監査の需要構造に関する一考察
沼野 伸生
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2013 年 26 巻 1 号 p. 30-44

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抄録

本稿は、今日における情報システム監査の需要構造を分析的に考察し、既存の監査需要論を拡張した、今日の情報システム監査の需要構造を明らかにすることを目的としている。

本稿では、拙稿基礎論文から情報システムの本質的特性、当事者構造とその特徴を振返り、各当事者の基本的欲求に基づく行動として、「仕事の委託者」による統制行動、「仕事の受託者」による説明責任遂行行動、「利用者・利害関係者」による関心行動、及び「情報システム提供者」による説明責任遂行行動を抽出した。そして、その行動の特性を分析し、各行動の中での情報システム監査の意義を整理した。

その後先行研究の監査需要論を概観した上で、それとの対比で、今日の情報システム監査の需要構造考察に当たり留意すべき点として、①情報システムの“不完全性”(安全性、信頼性、効率性等の追及における避けがたい失敗リスクの存在)、②「利用者・利害関係者」の当事者としての存在の大きさと特性、及び③当事者間の顕著な“情報格差” の3点を挙げた。そしてこれら3点を踏まえ、情報システムの健全な利活用促進を図る上では、各当事者の相互信頼関係の確立が基本であり、相互信頼関係の確立には各当事者(特に「仕事の受託者」、「情報システム提供者」(与えられた権限を行使する者))の説明責任遂行とその信頼性の担保が欠かせず、ここにこの説明責任遂行と不可分の、説明責任遂行に信頼性を付与し実効あらしめる情報システム監査が需要される本質があると指摘した。

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© 2013 システム監査学会
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