日本原子力学会和文論文誌
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建屋表面を対象とした低レベル放射能汚染の自動測定装置の開発
立花 光夫伊藤 博邦畠山 睦夫柳原 敏
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2004 年 3 巻 1 号 p. 120-127

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抄録
原子力施設の廃止措置において解体撤去を選択した場合,その最終段階で建屋・構造物の撤去が必要となるが,原子力施設の建屋・構造物は頑丈な鉄筋コンクリートからなり,解体から発生するすべてのコンクリートを放射性廃棄物として取り扱うことは合理的ではない。そこで,建屋・構造物から放射性の部分のみを分離し,発生するコンクリートを非放射性廃棄物として取り扱う必要がある。これには,建屋表面の放射能汚染を除去し,建屋の床,壁および天井の全表面にわたって有意な汚染のないことを確認(確認測定)した後,建屋を非放射性廃棄物として解体撤去することになる。
1986年から1996年に行われた日本原子力研究所(原研)の動力試験炉(JPDR: Japan Power Demonstration Reactor)の解体作業における建屋コンクリートの確認測定は,そのほとんどが汎用の表面汚染検査計(β線+γ線)を用いた作業員による測定作業であったため,多くの労力と時間を費やす結果となった。また,確認測定は,原子力施設の運転により発生した人工放射性核種が残っていないことを示すために実施したが,バックグラウンド計数率の変動が大きく,計数率が小さい場合には汚染のないことを確認することが容易ではなかった。バックグラウンド計数率は,コンクリート中に含まれる40K等や測定範囲外に存在する埋設配管等からの放射線に起因しており,その大部分が40K等のγ線である。作業員の負担を軽減し,効率化を図るには,測定作業の自動化が有効である。また,代表的な汚染核種である60Co(β線とγ線を放出)からのβ線の測定は,飛程が短く,バックグラウンド計数率が低いため,測定範囲の汚染を正確に把握し,低レベルの汚染を検出できる可能性がある。
そこで,バックグラウンド計数率の変動に影響されず,低レベルの放射線を自動測定することを目的に,測定対象物から放出されるβ線とγ線を分離してβ線のみを評価する積層型検出器を考案するとともに全方向に移動可能な自動走行ロボットを開発した。さらに,積層型検出器を自動走行ロボットに搭載し,コンクリート表面における低レベル放射能汚染を自動測定する建屋表面汚染測定装置(RAPID-1600: Radiation Measuring Pilot Device for Building Surface Contamination with 1,600cmcm2 Detectors)として完成した。
本報は,RAPID-1600の開発およびその特性についてまとめたものである。
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© by the Atomic Energy Society of Japan
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