抄録
超高強度繊維補強コンクリート(以下, UFC)は,普通コンクリートと比較して高靱性, 高強度および高耐久性を有している. しかしながら, 鋼繊維が腐食した場合には, このような高い性能が失われることになる. 本研究の目的は, ひび割れが生じた後におけるUFCの引張性能を実験的に検討することである. この結果として, 初期ひび割れがないUFCにおいては鋼繊維の腐食ならびに塩化物浸透は観察されなかった. その一方で, 初期ひび割れ幅が大きくなるほど, 海水面付近において鋼繊維の腐食生成物が多く検出されるようになった. さらに外力の載荷によるひび割れは広範囲に増加するようになり, 初期ひび割れ幅が0.5mm以上となるUFCでは, ひび割れに沿って塩化物イオンが浸入するようになった. UFCの初期ひび割れ幅に依存せず, 鋼繊維の腐食はUFCが受け持つ引張応力を増加させることも明らかになった.