抄録
リン酸濃度が大きく異なる3種類の下水汚泥焼却灰とCaCO3を原料とした焼成物を作製し, CaO濃度および焼成温度とその焼成物のケイ酸溶出特性との関係について調べた. その結果, もとの下水汚泥焼却灰の組成により, 鉱物の生成過程および溶出挙動が異なることが判明した.
Al2O3濃度が高い焼却灰の場合, CaO濃度を55%まで高めることでゲーレナイトおよびCa14.92(PO4)2.35(SiO4)5.65の混合物が得られ, リン酸ク溶率が98%およびケイ酸水溶率が86%まで向上した. また, Al2O3濃度が低い焼却灰の場合, CaO濃度を57.5%まで高めることでケイ酸二カルシウムが得られ, リン酸ク溶率およびケイ酸水溶率がともに98%以上に向上した.
このように, 組成が異なる下水汚泥焼却灰からであっても, CaO濃度を適切に調整することで, リン酸およびケイ酸の溶出特性に優れた肥料化が達せられた.