抄録
有機物分散剤を含む低セメントキャスタブルでは, 硬化過程における材料中のキャピラリー水中のCa2+イオン濃度は特徴的な3段階,すなわち(1)初期濃度,(2)溶出速度,(3)硬化のしきい値を経る。筆者はそれらによって硬化時間が決定されると考えた。そこで硬化時間が変化する要因として知られている温度,アルミナセメント銘柄,硬化遅延剤,分散剤を変えた際の溶出するCa2+イオン濃度の変化を調べ,この3点の特徴と硬化時間との関係を調査した。硬化時間の変化は,この3段階の変化で説明しうる。温度は主として溶出速度に影響した。アルミナセメント銘柄を変えると,初期濃度と溶出速度が変化した。硬化遅延剤と分散剤とは,溶出速度としきい値に影響を及ぼした。溶出速度は一定でなく,溶出の停滞が認められたが,これはアルミナセメントの特性による。