抄録
ハイアルミナセメント(High Alumina Cement:HAC)とシリカフューム(Silica Fume:SF)が結合材として使用されている低セメントキャスタブル(Low Cement Castables:LCC)の水和物にはストラトリンジャイト(stratlingite)が晶出する。本研究では50℃と30℃の養生温度の場合におけるstratlingite の晶出と解膠(こう)剤の添加による効果を経時変化を追って観察した。解膠剤を添加した試料は50℃の養生では 1 日後からstratlingiteが晶出し, 3 日後にX線強度は最高値に達し, 1 年後でもそのまま持続している。30℃の養生では 6 日後からstratlingiteは晶出し,次第に強度を増し, 2 週間後にX線強度が最高値に達し,その後は横ばいとなり, 1 年後も継続中である。解膠剤を添加しないものはどちらの養生温度でもstratlingiteは晶出するが,そのX線強度が低い。
EPMA観察では水和した試料はどれも不均一な組織を持っている。stratlingiteはSF塊の内部や周縁部またはその周辺部,さらにはマトリックス中及び空洞にも晶出しており,板状や放射状を呈している。 その化学組成はstratlingiteの理論値よりSiO2の含有率が高い。これは養生温度が比較的高いため結晶の成長速度が速く,周りのSFの微粒子を不純物として取り込んだものと考えられる。