大気環境学会誌
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原著
オゾン暴露したシロイヌナズナにおいてエチレンとサリチル酸は防御的な役割を持つ
吉田 征司玉置 雅紀小川 大輔青野 光子久保 明弘佐治 光中嶋 信美
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2009 年 44 巻 1 号 p. 9-15

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抄録

オゾンに曝された植物において,植物ホルモンのサリチル酸とエチレンは葉の可視障害を誘導・増幅する物質として知られている。一方,これらはオゾンに対して防御的に働くことも示唆されている。そこで本研究ではサリチル酸とエチレンによる防御機構の存在を明らかにすることを目的とした。シロイヌナズナのサリチル酸合成欠損変異体sid2及びエチレン非感受性変異体ein2を用いて,オゾンによる葉の可視障害を観察したところ,明瞭且つ安定した表現型を得ることができなかった。そこで,オゾン暴露によって顕著な可視障害が見られる変異体とsid2及びein2との二重変異体を作製し,それらのオゾン感受性を調べた。二重変異体の作製にはアスコルビン酸合成欠損変異体vtc1を用いた。この変異体においてオゾン暴露時にサリチル酸とエチレンのシグナルが機能しているかを確認したところ,vtc1変異体は野生型よりもサリチル酸とエチレンのシグナルが増加していた。したがってvtc1変異体はこれらのシグナルの機能を調べる材料として適切であることが確認された。そこで,vtc1/sid2vtc1/ein2の二重変異体を作製し,そのオゾン感受性を確認した。その結果,これらの二重変異体はvtc1変異体よりもオゾンによる可視障害が顕著に見られた。以上の結果はサリチル酸およびエチレンがオゾン暴露ストレスに対して防御的に働く側面を持つことを示している。

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© 2009 社団法人 大気環境学会
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