大気環境学会誌
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原著
大気質モデルの相互比較実験によるO3, PM2.5予測性能の評価
-2007年夏季、関東の事例
森野 悠茶谷 聡速水 洋佐々木 寛介森 康彰森川 多津子大原 利眞長谷川 就一小林 伸治
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2010 年 45 巻 5 号 p. 212-226

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抄録

O3とPM2.5の予測性能を評価するために、関東地方において化学輸送モデル(CTM)の相互比較を行い、2007年夏季の観測データと比較した。参加した4グループ全てがCTMとしてCMAQを利用しており、排出インベントリは各々が異なるデータを利用していた。全てのCTMがO3濃度とその経時変動を比較的良く再現していたが(r>0.5)、PM2.5を過小評価し、郊外においてはその経時変動の再現性も低かった(r<0.5)。PM2.5成分について、CTMはSO42-を濃度・経時変動ともに比較的良く再現していたが(r>0.5)、元素状炭素エアロゾル(EC)、有機エアロゾル(OA)を過小評価していた。また、CTM間でNO3-濃度に10倍程度のばらつきが見られた。OAはPM2.5濃度の31%-41%を占めており、その過小評価がPM2.5濃度の過小評価の大きな原因であった。今後、PM2.5の再現性向上のためには、OA再現性の向上が不可欠である。また、NOxやECなどの一次排出成分濃度のCTM間のばらつきは、排出量の差異によって概ね説明されたが、二次生成成分であるO3、TNO3(=HNO3+ NO3-)、二次有機エアロゾル濃度のCTM間のばらつきは境界濃度や前駆物質の差異によって説明されなかった。これらの成分の化学生成速度は前駆物質濃度に非線形に応答する事を反映しており、今後詳細な濃度制御要因解明が必要である。

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© 2010 社団法人 大気環境学会
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