大気環境学会誌
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原著
森林地域における霧による硫黄および窒素沈着量の数値予測
嶋寺 光近藤 明加賀 昭和Shrestha Kundan Lal井上 義雄
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2010 年 45 巻 6 号 p. 247-255

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抄録

本論文では,霧水沈着による酸性物質沈着量の空間分布の予測手法を示した。まず,森林植生への霧水沈着を予測する数値モデルを開発し,霧水沈着モデルによる霧沈着速度は風速と森林植生密度に依存することを示した。また,霧水沈着モデルと観測データとの比較により,霧沈着モデルが山地における霧水沈着量を概ね再現できることを示した。霧沈着モデルとともに,数値気象/大気質モデルMM5/CMAQによる2005年3月の予測結果を用い,近畿地方における霧水沈着量とそれに伴う硫黄および窒素沈着量の空間分布を推定した。その結果,山地の森林地域における霧水沈着量と降雨量の比は最大22.5%,平均3.4%となった。硫黄および窒素沈着量については,霧による沈着量が,降雨による沈着量に匹敵し,乾性沈着による沈着量を上回る地域も見られた。酸性沈着における霧水沈着の寄与は,気象場,大気環境,植生構造の季節変動によって変化すると考えられるため,さらなる研究のためには,より長期間で予測を行う必要がある。

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© 2010 社団法人 大気環境学会
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