抄録
埼玉県内4地点(浦和,熊谷,堂平山,埼玉県環境科学国際センター)において、1991年より約20年間にわたって大気中における亜酸化窒素濃度の測定を行い、その測定結果をもとに埼玉県における大気中の亜酸化窒素濃度の季節変化と経年変化について検討を行うとともに、国内で観測されている他の地域との比較検討を行った。その結果、大気中の亜酸化窒素濃度は、埼玉県内4地点間の大きな差異は認められなかった。また、我が国で清浄地域とされている綾里(岩手県)や波照間島(沖縄県)の亜酸化窒素の観測結果とも大きな差異は認められなかった。このことから、大規模な固定排出源がない場合は、県レベルだけでなく国レベルにおいても亜酸化窒素濃度に差はほとんどないことが明らかになった。また、亜酸化窒素濃度は近年においても上昇し続けているが、その上昇程度は1900年代よりほぼ一定で、1年間に0.66-0.68 ppbv程度であろうと推察された。一方、亜酸化窒素濃度の季節変化は、全地点において冬季に濃度が高く、夏季から秋季にかけて濃度が低下する傾向が認められたが、季節による濃度の変動幅はあまり大きくなかった。特に、清浄地域の亜酸化窒素濃度の季節変化は比較的小さいと考えられた。