大気環境学会誌
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技術調査報告
k-ε乱流モデルを用いた沿道の自動車排ガス拡散予測
-野外拡散実験データによる検証-
井上 亮河野 仁池本 和生
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2012 年 47 巻 2 号 p. 96-104

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抄録

2階建ての低層住宅密集地を対象にk-ε乱流モデルを使って、道路からの排気ガスの拡散予測を行い、野外におけるSF6拡散実験データと比較を行った。計算を行ったケースは大気安定度が中立に近く、風向が道路に対して直角に近い場合である。拡散予測範囲は道路から風下方向に約150mである。乱流強度の実測値を再現するのに必要な上流側の乱流計算領域の大きさ(助走区間距離)について検討を行った。その結果、流入境界の乱流強度に、概算値を与え、流入境界から250m風下における15m高度の乱流強度σw/uの観測データと計算値を比較し、良い一致を得た。また、ストリートキャニオンの格子点数の変化に対する予測濃度と実測濃度の整合度の変化について検討を行った。その結果、細街路の断面の鉛直方向および道路横断方向の格子点数が共に10以上の場合について計算を行い、実測値と良い一致が得られた。本計算結果から、建物密集地における道路からの近距離拡散を予測する場合には、計算対象地域における乱流強度の再現を確認し、建物の屋根面高さ以下の都市キャノピー内に生じる渦を再現することにより、実測と整合性がかなり高い予測結果が得られることがわかった。都市の自動車排ガスの近距離拡散に関しては、建物によって計算点近傍で発生する渦による拡散が支配する。そのため、CFDモデルにおいては、遠方で発生する乱流は、入力境界条件の中で近似的に扱い、計算点近傍で発生する渦の分解能を上げることが重要であると考えられる。

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© 2012 社団法人 大気環境学会
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