大気環境学会誌
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総説
多環芳香族炭化水素類の挙動と毒性に関する研究-東アジアを中心に-
早川 和一
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2012 年 47 巻 3 号 p. 105-110

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抄録

化石燃料の燃焼に伴って二酸化炭素の他にも種々の化学物質が発生し、気候変動の要因となるばかりでなくヒトの健康や生態系にも影響を及ぼしている。こうした有害化学物質の一つに多環芳香族炭化水素(PAH)及びニトロ多環芳香族炭化水素(NPAH)がある。以前からPAH、NPAHに発がん性を有するものが多いことは知られていたが、最近、これらの酸化体である水酸化体やキノン体のなかに、内分泌かく乱作用や活性酸素過剰産生作用を示すものがあることも明らかになり、肺がんだけでなく、喘息などのアレルギー疾患や心疾患などとの関連も疑われるようになった。著者は、20年ほど前にHPLC-化学発光検出法による超高感度なNPAH分析法を開発したことを契機に、我が国のみならず、日本海を挟む中国、韓国、ロシアの研究者と協力して大気PAH/NPAHモニタリングネットワークを組織した。そして、今日まで10年以上にわたって、これらの国々の都市とバックグラウンド地点で大気粉塵を継続捕集し、PAH、NPAHを追跡し、汚染レベルや発生源の変化、大気反応、長距離輸送などを追跡してきた。そこで、本大気環境学会賞総説では、著者の東アジアにおけるPAH、NPAHに関する研究成果を中心に、分析法や毒性にも触れながら紹介する。

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© 2012 社団法人 大気環境学会
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