抄録
沖縄辺戸岬での2008年春季の集中観測時を対象として、領域化学輸送モデルCMAQを用いて越境大気汚染の特徴の解析を行った。観測期間中に8回の間欠的な大陸からの流れ出しが起こり、数値シミュレーションにより濃度の時間変動や、高度分布がほぼ説明された。観測期間のライダー計測で捕らえられた汚染物質の高度分布も全般的にモデル結果と良く一致し、汚染質の輸送は2km以下で生じ、汚染気塊の空間スケールが説明できた。濃度のピークの出現時の気象条件には、単純な寒気の吹き出し(BCF)のケースと、高気圧の北側輸送(HPN)を汚染質が輸送されるケースの2つパターンがあることが判った。この2つのケースについて、汚染気塊のaging情報が異なり、HPNの方が、汚染気塊はagingされていた。中国の排出量のゼロにした感度解析で、中国起源のSO42--O3-COの相関関係を調べた。その結果、辺戸岬で観測された濃度ピーク時には中国起源の汚染質の寄与が圧倒的であることが判った。NMVOCの成分とその比の解析から、モデル計算に用いられているNMVOC発生源インベントリの改善の必要性が示唆された。