大気環境学会誌
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原著
冬季の日本海沿岸地域における降水による粒子状物質の取り込み
大原 信藤田 慎一杉本 聡一郎高橋 章
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2013 年 48 巻 2 号 p. 74-81

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抄録
冬季の日本海沿岸地域における降水による粒子状物質の取り込み過程を明らかにするために、新潟県において冬季に6 時間間隔で実施した降水と大気中粒子状物質の化学成分の観測データをもとに、降雪と降雨における粒子状物質の洗浄比を評価した。海塩成分(Na+, Cl-, Mg2+)では、降雪の洗浄比の幾何平均値が降雨のそれに比べて23倍大きい値を示した。一方、非海塩成分(nss-SO42-, NH4+, nss-Ca2+)においては、両者に明瞭な差は見られなかった。降雪におけるNa+の洗浄比の幾何平均値は気温によらずほぼ一定であった。一方、降雨のそれは、地上気温が高くなるほど低下し、降雪のそれに比べて約1桁小さい値まで低下した。nss-SO42-の洗浄比においても、Na+の洗浄比と同様に、降雨の洗浄比が地上気温の上昇に伴って低下する傾向が見られたが、その低下幅はNa+の洗浄比に比べて相対的に小さかった。以上のことから、海塩成分の洗浄比が降雨よりも降雪で数倍大きな値を示す一方、非海塩成分の洗浄比には降雪と降雨の間に明瞭な差が見られないという結果は、①地表付近で高濃度となる海塩成分では、高度による濃度差が小さい非海塩成分に比べて、雲底下での取り込みの寄与が相対的に大きい、②降雪による雲底下での粒子状物質の取り込みが降雨のそれよりも高効率である、という2つの要因が複合的に作用するためだと考えられる。
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© 2013 社団法人 大気環境学会
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