2014 年 49 巻 3 号 p. 149-156
微小粒子状物質(PM2.5)の地上観測と、衛星から観測されるエアロゾル光学的厚さ(AOD)について、10年以上の長期間の観測データを活用して月平均値を基本にその対応関係について解析を行った。各地点の観測データについて、PM2.5とAODは利尻、隠岐、箆岳、川崎の4地点では相関係数0.7程度の有意な相関があり、大阪における相関はやや低めで、また中国北京では有意でない結果を得た。この点に関し、衛星データの月内データカバー率を考慮することが両者の対応関係を適切に評価する上で必要であることを示し、データカバー率が40%以上のデータに対象を限ると、日本の5地点と中国北京の計6地点すべてで有意であり、平均して0.63の相関係数を得た。PM2.5とAODには空間的にも有意な相関があり、AODを活用した一例として、北京をはじめ大陸で非常に高濃度のPM2.5が観測された2013年1月の事例について2001年から2010年までの10年平均値との偏差を解析した。その結果、日本域におけるPM2.5の顕著な増加は見られなかったことがAODの解析結果から示された。衛星から観測されるAODはPM2.5の動態解析に用いることができる有用な情報の一つであることを示した。