大気環境学会誌
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研究論文(ノート)
生物起源VOCを添加した東京の都市大気への光照射によるオゾンとホルムアルデヒドの生成
松永 壮 石倉 淳士島田 幸治郎星 純也齊藤 伸治上野 広行
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2015 年 50 巻 5 号 p. 233-238

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抄録

都市におけるオゾン高濃度は現在も解決できていない環境問題の一つである。その原因の一つとして考えられるのが、未考慮のVOCによるオゾン生成である。そこで本研究では、都市緑地や街路樹から放出される生物起源VOCによるオゾン生成の重要性を確認することを目的にチャンバー実験を行った。この実験では、実大気をフッ素樹脂製のバッグに充填し、そこへ代表的な生物起源VOCである、イソプレンとα-ピネン、人為起源VOCであるトルエンを添加し、UVを照射しオゾン濃度と、これもオゾン生成能が大きく毒性の高いホルムアルデヒド濃度を測定した。UV照射を行い6時間後のオゾン濃度を何も添加しない実大気であるコントロールと比較したところ、イソプレン、α-ピネンのいずれの場合でもオゾン濃度はコントロールに比べて約30%高くなった。また、イソプレンとトルエンを同量添加して行った並行実験では、反応開始6時間後にはイソプレンの方が平均で33%高いオゾン濃度を示した。こうした結果からイソプレンが都市大気中で大きなオゾン生成能を持つことが確認できた。本研究によって、生物起源VOCによるオゾン生成が人為起源VOCによるオゾン生成に対して重要である可能性が示された。

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© 2015 大気環境学会
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