大気環境学会誌
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研究論文(技術調査報告)
微小粒子状物質中の炭素成分分析における正のアーティファクトの影響評価
齋野 広祥 速水 洋三浦 和彦
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2016 年 51 巻 3 号 p. 153-160

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抄録

東京都狛江市において、2014年4月から2015年3月までの各月上旬(10日間)にフィルタ法とデニューダ・フィルタ法を用いて微小粒子状物質(PM2.5)を併行採取し、IMPROVEプロトコルに基づく熱分離・光学補正法により有機炭素濃度の測定を行った。その結果、フィルタ法の有機炭素濃度は0.6–8.4 μgC/m3 (平均2.8 μgC/m3、標準偏差1.4 μgC/m3)、デニューダ・フィルタ法の有機炭素濃度は0.2–7.6 μgC/m3 (平均1.7 μgC/m3、標準偏差1.2 μgC/m3)であった。これらの濃度差より、ガス状有機炭素濃度は0–4.1 μgC/m3 (平均1.1 μgC/m3、標準偏差0.9 μgC/m3)と見積もられた。フィルタ法で採取した全有機炭素のうちガス状有機炭素が占める割合(正のアーティファクト)は2014年5月から2015年2月まで0.3–0.4の範囲内にあったが、2014年4月と2015年3月は0.5以上となっていた。これより、春季の有機炭素は半分以上がガス態であり、PM2.5中の有機炭素分析において大きな影響を与えていることが示唆された。また、ガス状有機炭素の60–90%はOC2であり、その濃度は一年を通して大きな変化がなかったことから、大気環境中にはOC2に含まれる成分が一定量存在していることがわかった。一方、粒子状有機炭素はOC3とOCpyroが主成分で50–70%を占めており、特に11月に高くなっていた。

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© 2016 大気環境学会
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