2017 年 52 巻 2 号 p. 81-88
現在の窒素酸化物測定の主たる公定法であるオゾン化学発光法は、窒素酸化物濃度を過大評価することが知られている。本研究では典型的な都市域である大阪府立大学構内において、先行研究で開発した高確度窒素酸化物測定装置と公定法とによる、窒素酸化物濃度の比較連続観測を通年で行った。なお、本論文では高確度窒素酸化物測定装置、公定法で測定した窒素酸化物濃度をそれぞれNOx, NOx*と定義する。公定法が時間帯や季節を問わず窒素酸化物濃度を過大評価していることが確認された。NOx*とNOxの1時間値の濃度差と濃度比の平均値はそれぞれ3.38 ppbv, 1.32であった。濃度差NOx*–NOxとポテンシャルオゾン(PO)の間には特に夏季の昼間に高い相関関係が得られた。この結果は、大気中の光化学反応が活発で、PO濃度が高いほどNOx*–NOxが高い、すなわち公定法がより過大評価する傾向にあることを示している。一方、光化学活性度の低い夜間においても、高いNOx*–NOxが観測され、その原因の一つとして、亜硝酸やN2O5など暗反応で生成する窒素酸化物種の寄与が示唆された。