大気環境学会誌
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研究論文(技術調査報告)
PM2.5中の水溶性有機炭素濃度の測定:フィルタ分析と連続自動分析装置との比較
齊藤 伸治 星 純也池盛 文数長田 和雄
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2020 年 55 巻 3 号 p. 150-158

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抄録

水溶性有機炭素 (WSOC) 濃度測定用のPM2.5試料の採取と抽出条件について検討するために、2013年4月から2018年3月にかけて東京都環境科学研究所(江東区)で24時間ごとに種々のフィルタ採取を実施した。採取流量については、16.7 L/minよりも30.0 L/minのほうがWSOC測定値は低い傾向にあったが、その差は1割未満と限定的であった。一方、フィルタ素材の違いについては、PTFEフィルタよりも石英繊維フィルタのほうが20%程度高い傾向にあった。フィルタ試料に対する抽出液量の違いによる差は見られなかった。次に、フィルタ採取試料の分析により得られたWSOC濃度と自動分析装置 (ACSA) による1時間ごとの紫外吸光度データとを比較した。全データ (n=1569) で良好な相関関係にあるが、月ごとの回帰直線の傾きは暖候期と寒候期で約2倍の差があった。これは、WSOC (シュウ酸やレボグルコサン等)の紫外吸光特性が成分によって大きく異なることやWSOCを構成する化学成分の割合が季節変化することが主な原因と考えられる。これらの結果から、紫外吸光光度法に基づくWSOC濃度の自動測定においては測定季節や地点における構成成分の違いを考慮し、フィルタ分析法などの別手法による検証が必要であることがわかった。

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© 2020 大気環境学会
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