2021 年 56 巻 2 号 p. 35-42
瀬戸内海周辺地域は全国的に見て相対的に大気汚染物質濃度が高い状態にあり、この原因の一つが、船舶由来の排気ガスとの指摘がある。本研究では、瀬戸内海海上と周辺陸上局にてそれぞれ測定された大気中のSO2、NOx、PM2.5の時空間変動の特徴とその要因を考察した。垂水局と兵庫南部局にてConditional Bivariate Probability Function解析等を行った結果、SO2濃度は海風の進入とともに上昇し、高濃度時には船舶の往来が集中する明石海峡方向からの大気の流入が確認できた。これは、二山型の日内変動を示すNOxとは異なる傾向となった。PM2.5は、春から秋にかけて日中の濃度上昇が確認できたが、SO2やNOxと比較して日内変動幅は小さく、広域的な汚染であることが示唆された。海上のSO2濃度は、最大で陸上局濃度の約5倍となり、他方、NOxは陸上局と同程度あるいは低濃度、PM2.5は陸上局とほぼ同程度であった。大阪湾・播磨灘および周辺沿岸地域において、SO2とNOxの主要な発生源は、それぞれ海上と陸上に存在する可能性が示された。