大気汚染研究
Online ISSN : 2186-3687
ISSN-L : 0039-9000
海陸風領域における地表境界層の解析
千秋 鋭夫
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1966 年 1 巻 1 号 p. 46-54

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抄録

目的
排ガスの大気拡散問題を解明するために下層大気の気象観測を行なって拡散場の気象条件を明らかにしなければならない。
大気拡散に関連する下層大気の気象条件として海岸地帯において最も重要な, 地表付近に発生する局地風, すなわち海陸風の解析を行ない, また, この海陸風域に発生する地表境界層の特性, 海陸風との関係について堺, 姫路および八戸市において行なったけい留気球による下層大気の気象観測結果をまとめた。
結果
1) 海陸風域に発生する境界層高度はかなり明確な日変化を示した。すなわち, 日の出前後, 前夜からの陸風域で充分発達した境界層は300m程度にまで達した。
しかるに, 9時から10時にかけて, 陸風が海風に交替する時期には境界層は検出されなかった。これは境界層を作る流れが消滅したためで当然である。こののち, 海風が吹きはじめると同時に境界層が形成され, その高度も最初50m程度以下であったものが徐々に発達し午後には150mに達した。
2) 境界層高度は地表附近の大気安定度と強い相関があり, 中立状態で最も高く, 300mに達した。大気が中立状態以外のとき, 安定, あるいは不安定状態のときはいずれもこれより低い高度となった。
3) 地表粗度は風速が弱いとき大きく, 風速が強くなると急激に減少した。風速1m/sec以下では20m程度であるが, 2m/sec以上では5cm以下であった。
4) マサツ速度はほぼ地上1mの高度の風速の1/10であった。

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