大気汚染学会誌
Online ISSN : 2186-3695
Print ISSN : 0386-7064
ISSN-L : 0386-7064
寒冷地における大気汚染の影響
福地 保馬渡部 真也若葉 金三
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 19 巻 1 号 p. 28-34

詳細
抄録

北海道内の室蘭市・旭川市および上磯町内合計8地区の40歳以上の住民計10,843名について実施されたBMRC質問調査票に準拠した呼吸器症状質問紙調査によって得られた慢性気管支炎症状 (CB) 有症率と大気汚染度の関係について検討した。
大気汚染度が, 質的量的に異なる8地区のCB有症率と, 二酸化鉛法による硫黄酸化物濃度との間には高い正の相関が認められ, また・性, 年齢・喫煙者率で訂正したCB有症率 (y%) と硫黄酸化物濃度 (Xmg/cm2/d)の間には, 一次回帰式Y=3.87+4.21Xが成立した。
この回帰式によって推定される北海道におけるCB有症率は, 大阪市における大気汚染環境調査から清水らが得た汚染度-CB有症率の関係式から推定される有症率よりも大幅に上まわっていた。
また, 人体影響出現限界以下と考えられていた大気汚染濃度の低い3地区でも, CB有症率がこれまで考えられていた自然有症率を超えていることが認められた。
これらの要因としては, 北海道における自然および生活環境の特殊性と大気汚染発生の特殊性があげられるが, 寒冷地における大気汚染の影響評価にはこれらのことを考慮することが必要である。

著者関連情報
© 大気環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top