1985 年 20 巻 3 号 p. 218-227
1983年6月より翌年5月までの1年間, 奈良県下14地点でデポジットゲージ法により降下ばいじんを雨水と共に採取し, その水溶性成分について降下量を測定し, 主成分分析法を適用した。
人口密度で区分した試料のpHおよび水溶性成分の降下量は, pHが人口密度の増加と共に低下し, 人為的発生の汚染質とみなされるSO42-, NO3-, NH4+ の降下量は増加する傾向を示した。一方, 自然的発生の汚染質とみなされるNa+, K+, Ca2+, Mg2+, Cl-の降下量に関してはほとんど差は認められなかった。
主成分分析法により, 降下ぽいじんの水溶性成分の降下量は2個の主成分 (z1, z2) に指標化することができ, 第1主成分z1は水溶性成分の総合的降下量を示す因子, 第2主成分麹は水溶性成分の発生源寄与を示す因子であると考えられた。これら2個の主成分z1とz2を用いることにより, 水溶性成分の降下量の月別および地点別の総合的降下量と発生源寄与を評価することができた。