大気汚染学会誌
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北京地区における大気粉じん中の硫黄の状態分析
伴 豊古谷 圭一菊地 正江 安瑛黄 衛初馬 慈光呉 錦
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1985 年 20 巻 6 号 p. 470-479

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抄録

大気浮遊粉じん中硫黄の状態別定量を高分解能けい光X線分析法を用いて行ない, S2-とS6+の状態量と大気中二酸化硫黄濃度との関係を, 中国北京地区における、典型的な都市地区, 工業地区, 自然地区の3っのサソプリソグ地点 (東単, 北辛安, 懐柔) において1982年7月より1983年12月の期間にわたって測定した。
試料はハイボリュームエアサソプラーを用いた石英ファイバーフィルター上に捕集した, けい光X線分析法による硫黄の検量線作成について, 従来行われてきた方法では問題があるため, あらかじめ燃焼赤外線吸収法を利用して硫黄量を求めた実際試料を用いて補正する方法を開発した。
状態分析の結果, 大気浮遊粉じん中硫黄はS2-とS6+の2つの状態が存在し, S6+は全硫黄中の85%以上を占めることが明らかとなった。全硫黄量, S肝量, S2-量とも東単で最高のレベルを示し, 北辛安では東単とほぼ等しいかやや低値を示し, 懐柔では常に低いレベルで推移した。これら各種の硫黄の挙動は3つの地点間で類似した傾向を示したが, 大気による希釈, 輸送の影響と推測される。北京市付近では暖房の使用が一定期間内に制限されるが, 暖房期にはS2-, 二酸化硫黄濃度が増大し, 特に東単で著しかった。懐柔では空気量当たりの硫黄量は低値を示したが, 粉じん量当たりのそれは最高で, 二酸化硫黄の気相酸化, 固相への凝縮と関連しているものと考えられる。

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