大気汚染学会誌
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大気浮遊粉じんの変異原性
前橋市と東京都港区との比較
大谷 仁己嶋田 好孝氏家 淳雄西村 哲治松下 秀鶴
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1985 年 20 巻 6 号 p. 463-469

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抄録

1983年10月3~17日, 1984年1月6~20日, 4月9~23日および7月9~24日の間, 前橋市および東京・港区において大気浮遊粉じんを採取し, その変異原活性をサルモネラ菌TA100およびTA98株を用いて測定した。前橋市の値は群馬県衛生公害研究所で, 東京・港区の値は国立公衆衛生院でそれぞれ別々に測定した。両者で同一の大気浮遊粉じん抽出物を測定したところ差がみられたため, 補正のための係数としてTA100+S9に対しては0.79, TAIOO-S9, 0.78;TA98+S9, 1.33およびTA98-S9, 0.60を各々東京の値にかけ両者の比較を行った。
その結果, 両地点とも大きな経日変動がみられた。それぞれの算術平均値を比較すると, 東京における変異原活性は前橋に比べ2菌株とも高い値を示した。また, 両者の季節変化には差がみられ, 東京・港区では2菌株とも冬 (1月)>秋 (10月)>春 (4月)>夏 (7月) の順に高い値を示したが, 前橋では秋~ 春>冬~ 夏の順であった。この一因は測定点群馬県衛生公害研究所が前橋市の北西部に位置するため, 冬期は強い北西からの季節風により, 市郊外から汚染の少ない空気が流入することにより変異原活性が低くなり, 春・秋は風が弱く汚染物が停滞しやすいことにより変異原活性が高く出たものと思われる。

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