大気汚染学会誌
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ディーゼル排出物質の長期吸入ばくろ実験-肺および肺外臓器にみられた形態学的所見
岩井 和郎宇田川 忠山岸 正晴山田 博之
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1986 年 21 巻 1 号 p. 38-51

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抄録
ディーゼルエンジン排出ガス (粒子濃度4.9±1.6mg/m3) の長期吸入ばくろ実験を, 無菌餌育SP2F, Fisher3磁系ラットで行い, 経時的に剖検して組織学的変化を観察した.
最も顕著な変化として, 10倍希釈全排ガスばくろ群の肺に, 粒子沈着部に関連して, II型肺胞上皮の化生性増生巣と, 呼吸細気管支の異所性増生巣とが, 6ケ月をすぎた頃より出現し, 次第にそのひろがりを増した. 1年ばくろ3ケ月観察動物では, 腫瘍の発現がみられ, 2年ばくろではその数を増し, 一部は癌と判断された. 2年ばくろ後6ケ月観察動物も含めると2年ばくろ動物の26.3%に悪性化がみられた. 癌には腺癌と, 腺類表皮癌または類表皮癌の二種が区別され, それぞれ細胞由来が異なると思われた.
肺以外では悪性リンパ腫とそれに伴う白血病の発症が脾にみられ, 除粒子群, 全排ガス群の両群に対照群よりも高率にみられ, 前者により早くから発現する傾向を示した. 組織学的にはリンパ濾胞に発生し, 白脾髄を置換えつつ増殖する型と, 脾洞内で主に増殖する型とがみられ, 後者により白血病化の傾向が大であった.
乳腺腫や線維腫の発生も両ばくろ群で多発する傾向があり, 肉腫は全排ガス群にのみみられた.
今後種々のばくろ条件下での実験を必要とすると考えられた.
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