抄録
1983年7月26~30日に実施された東京湾地域から長野県東北部までの広範な地域における共同観測結果を用いて, 沿岸地域から内陸の山岳地域への大気汚染物質の輸送および変質過程を解析した。
早朝の弱風時に東京湾地域に形成された汚染気塊は, 光化学反応による変質を伴いつつ, 12時頃まで同地域に滞留した。その後, 中部山岳地域の熱的低気圧に吹き込む大規模風が発達するとともに, 汚染気塊は内陸に向かって輸送された。16時頃に長野県東部に侵入したこの低温多湿な汚染気塊は, 日没後に山風と相乗して重力風を形成し, 日本海側に流下した。汚染気塊の移動経路は, パイロットバルーン観測データから求めた高度100mの流跡線と良く一致した。また, 汚染気塊の輸送速度は15時頃に最大となり, 日中の平均輸送速度は4.6ms-1であった。
流跡線上のNO, NO2, Ox, 炭化水素成分濃度の経時変化のパターンはスモッグチャンパー実験の結果と良く一致し, 輸送中に汚染物質の沈着や新たな供給が少しあるものの, 汚染気塊中ではスモッグチャンバー実験で観測されたと同様の光化学反応が進行していたことが確認された。
更に, これらの結果と, 先に報告した長野県東北部におけるOx高濃度日の統計的な解析結果に基づいて, 沿岸地域から内陸の山岳地域への大気汚染物質の輸送過程を模式的に表わして, その特徴を明らかにした。