抄録
粒子濃度と硫酸塩濃度の粒径別分布特性を調べるため, 広島市において, アンダーセン・サンプラーによる測定を, 1年間連続して行つた. 1回の測定のサンプリング時間は概ね10日間とした. 濃度分布の候補とした分布モデルは, 正規分布, 対数正規分布, ガンマ分布および逆ガウス型分布である. これらの分布の母数を最尤法により推定し, 各分布の適合度を最大対数尤度法により評価した.
浮遊粒子状物質 (SPM) 濃度にはガンマ分布が最適であるが, 微小粒子 (Dp≦1.1μm) 濃度と粗大粒子 (Dp≧2.1μm) 濃度とは適合する分布形が異なり, 前者には正規分布が, 後者には逆ガウス型分布が, それぞれ最適であつた. 一方, 硫酸塩濃度には, 微小粒子, 粗大粒子ともに逆ガウス型分布が最適であった.
粒子濃度の, 10, 50, 90パーセンタイル値の粒度分布は, 微小粒子側が0.65μmに, 粗大粒子側が4.7μmまたは3.3μmに, それぞれピークを持っbimodalな分布であるのに対し, 硫酸塩濃度の各パーセンタイル値の粒度分布は0.65μmにのみピークを持つmonomodalな分布である. 以上の結果は, 微小粒子と粗大粒子とは由来が異なること, 硫酸塩の大半は二次粒子であることを示唆している.