抄録
NOx高濃度汚染現象をもたらす気象的要因の一つとして, 陸風前線の影響を, 東京新宿御苑において1983年1月に実施した野外観測のデータと当日の首都圏の大気汚染測定局データを解析することにより検討した。その結果,(1) 陸風前線通過時には, 地上から上空数100m以上にわたりNOxが急激に高濃度となり, その領域は陸風ヘッドにほぼ一致すること。一方, NO2濃度の増加はそれに比べて少ないこと,(2) Oxは陸風ヘッド内では豊富なNOとの反応により消費され, ほとんど存在しないが, 上空では数10ppb程度の濃度レベルに保たれているため, ヘッドの上部境界ではOxが下向きに輪送されていると考えられること,(3) 当日の最高NOx濃度出現時刻は, 前線の通過にともない東京都心部を中心とする南北断面上で, 北から南に向かうに従い遅くなること, 等が明らかにされた。