大気汚染学会誌
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25 巻, 1 号
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  • 原 宏
    1990 年 25 巻 1 号 p. 1-29
    発行日: 1990/01/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    気相にある, 硫黄および窒素の化合物が大気中の水に溶解したときに進行する酸化反応をまとめた。まず, この系の化学反応を考察するときの重要なポイントをマトリックスの形に整理し, 解説した。次に, SO2を中心にH2S, NOxなどについて, H2O2, O3などによる反応の速度やメカニズムの研究について, 最近の進歩を紹介した。
    これらの知見の多くは, 湖沼, 海洋表面など, 大気と界面をなす液相についても応用できる。
    主要な結論は以下のとおりである。
    (1) S (IV)-H2O2, S (IV)-O3の反応速度式が確立された。
    (2) OHやSO4-;などのラジカル反応も重要である。
    (3) S (IV)-Fe (III) などの金属触媒反応の有力なメカニズムが提出されている。
    (4) 液相の光化学反応も重要である。
    (5) SO2, H2O2, O3などの適応係数が実測された。
  • 阿相 敏明, 金子 幹宏, 天野 正明
    1990 年 25 巻 1 号 p. 30-40
    発行日: 1990/01/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気中のHCl, HNO3, SO2の酸性ガス状物質とCl-, NO3-, SO42-の酸性粒子状物質の分別測定法について検討した結果, 以下の諸点が明らかとなった。
    1. 拡散デニューダ管を取付けたポリアミドフィルター試料捕集法とポリアミドフィルターとアルカリフィルター試料捕集法とを併用することにより, 大気中の酸性ガス状物質と酸性粒子状物質が分別捕集され, またイオンクロマトグラフ法との組合せで, これらの物質の同時迅速測定が可能である。
    2. 拡散デニゴーダ管の塗布試薬として, 5%炭酸ナトリウム・2%グリセリン溶液を用いることにより, 酸性のガス状物質の捕集率は吸引流量12l/分 (1本当たり1l/分) で97%以上, また酸性の粒子状物質の透過率も95%以上であった。
    3. 本法を用いて1987年6月に測定した結果, HCI O.4-5.8PPb, Cl-O.6-4.5μg/m3, HNO30.4-2.9ppb, NO3-2.2-8.5μg/m3, SO22.0-11, 4ppb, SO42-4.1-7.1μg/m3の濃度を示した。なお, 本法の測定限界は空気採気量720lでHCI0.18ppb, Cl-, 0.20μg/m3, HNO30.08ppb, NO3-0.20μg/m3, SO20.08ppb, SO42-0.34μg/m3である。
  • 泰中 啓一, 山本 晋
    1990 年 25 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 1990/01/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    孤立した汚染質の発生源が海岸に立地する場合, 内部境界層の形成によるいぶし現象のため高濃度大気汚染がしばしば観測される。本報告では, 海岸立地の単一汚染源に対するアセスメント等に資する目的で, いぶし現象を取り入れた簡略的な拡散モデルの開発を行った。このモデルはLyonsらのいぶし現象モデルを簡略化したものであり, モデルの検証は日本原子力研究所によって茨城県東海村で行われた1982, 83年の拡散実験データを用いた。その結果, 最大着地濃度などにおいて従来の簡略拡散モデルに比べ実測値との一致は良いことがわかった。
  • 基本臭の推定
    大迫 政浩, 西田 耕之助
    1990 年 25 巻 1 号 p. 46-55
    発行日: 1990/01/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    本研究では, 嗅覚のにおい物質に対する受容選択性と基本臭の存在を前提条件として, 多成分系複合臭の評価モデルを構築することを目的とした。そこでまず本報では, 計量心理学的手法としてのクラスター分析および因子分析と, 嗅覚順応の選択性を利用した手法を用いて基本臭の推定を行った。各手法によるにおい物質の定性的分類の結果, 現段階で最も妥当性の高いと考えられる基本臭として, シネオール, 塩化エチレン, 二硫化メチル, ゲラニオール, ペンタデカノラクトン, メチルアミンおよびイソ吉草酸の7物質を選定した。
  • 複合臭の強度およびにおい質の推定
    大迫 政浩, 西田 耕之助
    1990 年 25 巻 1 号 p. 56-65
    発行日: 1990/01/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    本研究では, 嗅覚における受容選択性と基本臭の概念から, 複合臭気の強度とにおい質の評価モデルを新たに導出し, その適合性について実際に2, 3成分系の複合臭を試料とした実測データにより検討を行った。
    すなわち, まず, においの強度の概念を生理的強度と感覚的強度に分け, それぞれの複合臭の評価モデルを提案し, 単一臭気および複合臭の類似度プロファイル, 並びに強度, 快・不快度の実測結果から生理的強度の評価モデルの適合性を検討し, 全組合せの約8割を±10%の精度で推定できることが確認された。また, 複合臭のにおい質評価モデルの適合性を検討した結果, におい質を表す推定プロファイルと実測プロファイルのパターン類似率, およびパターン類似率と感覚的類似性の対応関係から本評価モデルの適舎性がかなり高いことが確認された。
  • 大原 利眞, 鵜野 伊津志, 若松 伸司
    1990 年 25 巻 1 号 p. 66-76
    発行日: 1990/01/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    NOx高濃度汚染現象をもたらす気象的要因の一つとして, 陸風前線の影響を, 東京新宿御苑において1983年1月に実施した野外観測のデータと当日の首都圏の大気汚染測定局データを解析することにより検討した。その結果,(1) 陸風前線通過時には, 地上から上空数100m以上にわたりNOxが急激に高濃度となり, その領域は陸風ヘッドにほぼ一致すること。一方, NO2濃度の増加はそれに比べて少ないこと,(2) Oxは陸風ヘッド内では豊富なNOとの反応により消費され, ほとんど存在しないが, 上空では数10ppb程度の濃度レベルに保たれているため, ヘッドの上部境界ではOxが下向きに輪送されていると考えられること,(3) 当日の最高NOx濃度出現時刻は, 前線の通過にともない東京都心部を中心とする南北断面上で, 北から南に向かうに従い遅くなること, 等が明らかにされた。
  • 内山 茂久
    1990 年 25 巻 1 号 p. 77-84
    発行日: 1990/01/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    千葉市内の自動車交通量の多い地点において, 1987年4月より1年間にわたり大気中浮遊粒子状物質をアンダーセンサンプラーを用いて採取し, 粒子状物質, イオン成分 (NH4+, Na+, K+, Ca2+, Mg2+, SO42-, NO3-, Cl-) の粒度分布および大気中濃度の季節変動を検討した。
    粒子状物質およびNH4+を除くイオン成分の粒度分布はいずれも年間を通じ2μm付近を谷とする二山型を示したが, NH4+成分は年間を通じ2μm以下の微小粒子中にのみ一山型の粒度分布を示した。これらの分布は, 粒子状物質のように年間を通じて粒度分布が粗大粒子と微小粒子の粒度分布がほぼ等しいもの, NO3-, Cl-のように季節によって粒度分布が大きく変動するもの, SO42-, NH4+, K+のように年間を通じて粒度分布が微小粒子側に偏るもの, そしてNa+, Ca2+, Mg2+のように年間を通じて粒度分布が粗大粒子側に偏るものに大別することができた。
    大気中濃度では, TSP, SO42-, K+のように年間を通じて季節変動が小さいもの, Na+のように冬季に濃度が低くなるもの, そしてNO3-, Cl-, NH4+, Ca2+, Mg2+のように冬期に濃度が高くなるもの, に大別することができた。
    全イオン成分当量濃度は, 微小粒子モードにおいて冬期に高く夏期に低い季節変動を示したが, 粗大粒子モードでは, 強い季節風が吹いた7月を除いてイオン成分濃度の季節変動が小さかった。
  • 羅 東民, 高木 興一, 西田 薫, 山本 剛夫
    1990 年 25 巻 1 号 p. 85-96
    発行日: 1990/01/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    エーテル臭, 樟脳臭, ジャ香, 花香およびハヅカ香に対するにおいの類似度が0~8の数値で示されている, Amooreのデータのうち, 97の物質を用いて, 以下の検討を行った。
    パターン認識の手法を用いることのできる計算機プログラムADAPTにより, 上記97物質について, 分子の64の性質についての数値を計算し, 類似度を目的変数とする重回帰分析を行った。各においごとに5つの説明変数からなる, もっとも相関係数の高い, 重回帰式を導出した。エーテル臭の場合が, 相関係数がもっとも高く, 0.844であった。これらの解析には用いられていない物質で, Amooreにより, エーテル臭をもつとされている27物質, ジャ香をもつとされている44物質について, 導出した重回帰式を用いて, それぞれ類似度を計算した。前者については, 27物質中26物質が, エーテル臭の類似度がもっとも大きい値を示した。後者についても, 44物質中33物質が, ジャ香の類似度がもっとも高い値を示した。
  • 若松 伸司, 鵜野 伊津志, 須山 芳明, 阿相 敏明, 牧野 宏
    1990 年 25 巻 1 号 p. 97-101
    発行日: 1990/01/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    都市域上空における大気汚染物質の挙動を明らかにするために, 低速度で長時間にわたる観測が可能な飛行船を利用して1989年3月27日に東京, 川崎, 横浜上空において, O3, NO/NOx, 炭化水素濃度の測定を行った。得られた観測結果を用いて, NOx発生量の地域分布の見積りや発生源の違いによるNOx濃度中に占めるNO2の比率並びに発生源から直接的にNO2の形で放出される割合についての推定を行った。
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