抄録
わが国の気象条件や地理要因と照らして, 妥当性のある硫黄化合物の沈着速度を検討するとともに, 既存の濃度データを用いて乾性沈着量を推計し, 湿性沈着量や先駆物質の発生量との関係を調べた。
陸域と沿岸海域を綱羅するほぼわが国の全域を, 80×80kmの114個の正方メヅシュに分割し, 土地利用データと気象データを用いて地表面の粗度と吸収抵抗を設定し, 暖候季の沈着速度の分布を求めた。推定した平均沈着速度は, 二酸化硫黄: 0.41cm/s, 硫酸塩: 0.21cm/sであった。暖候季に乾性沈着の過程で全域に沈着した硫黄化合物の量は, 約0.30TgS/005yであり, この値は同じ期間の湿性沈着量とほぼ匹敵することがわかった。また沈着した硫黄化合物の90%以上は二酸化硫黄であり, 硫酸塩の寄与は相対的に小さいことが示唆された。